「誰か、私を人間に戻してください」
〝食べさせる人は敵〟
「瘦せ姫」たちの心の叫びとは
摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題の書に!
一方、吐くなどして瘦せるという排出型の場合はどうでしょう。こちらで目をひくのは、自己嫌悪の吐露です。
というのも、食べたものを意図的に吐いたりする行為が異常なのではないか、という感覚は大なり小なり誰もが抱き、しかも容易に打ち消せるものではありません。その結果、人として間違っていることをしているような、それどころか、人ではなくなってしまったような、罪悪感や孤独感にさいなまれることになります。
ある20代女性は、そんな自分のことを「人間ポンプ」だと表現しました。
身長は151センチで、過食嘔吐歴は4年。吐かずに食べられるものはほとんどなく、いわゆる「吐き残し」と野菜ジュース、サプリメントだけで生きている状態です。体重は最低で24キロまで落ちました。
が、ブログの内容はそれほど暗くはありません。生理が止まったことについても、「赤ちゃんができるような行為はしていないので……ウヒャヒャヒャ」
などとユーモアまじりに語れるようなお茶目なキャラクターです。体重についても、「背が低いので、20キロ台で2キロ減でも、全然大丈夫だと思うのですが」
と、そんなに深刻なそぶりは見せていませんでした。
ところが、ある日、こんな文章が記されます。
「まるで、人間ポンプですよね。もう、イヤです。まともな人間に戻りたい。誰か、お願いですから、誰か、私を人間に戻してください」
この文章を読んだとき、昭和のアニメで、平成にはドラマ化もされた『妖怪人間べム』の有名な台詞を思い出したものです。
「早く人間になりたい」
この作品は、人間の心と妖怪の体を持つ「妖怪人間」たちが主人公で、彼らはその正体を隠しつつ「(普通の)人間」になりたいと渇望し、苦闘するわけですが……。